■ はじめに

 このドキュメントは過去に遠藤雅伸氏が「ゼビウスセミナー」という番組に出演し、 ゼビウスをプレイしながら行った発言を全文引用し纏めたものです。 引用部分はなるべく発言を尊重するように起こしましたが、 発言の意図を変えないレベルで補正をさせていただきました。 予めご了承ください。

 放映時期は1987年辺りまでに遡るということですから、 ファミコンの「スーパーマリオブラザーズ」などのゲームが一般層に普及した頃でしょうか。 1987年頃というと遠藤氏は「リターン・オブ・イシター」(1986/7)の完成を終えた辺りですから、 プロジェクトの終了を以てスケジューリングされたのかもしれません。

 Youtubeに当時の貴重なVTRがアップロードされており、 重要な資料として誰でも閲覧できるようになっています。

■ 開発のきっかけについて

 もう随分、このゲームをやっていませんが、 このゲームを作った時というのはこういったスクロールするタイプのゲームというのはまだ珍しい頃で、 「8方向レバーにボタン2つ」というのは、この(ゼビウスの)前にコナミの「スクランブル」というゲームがありますけれど、 その流れを汲んでいて、それを縦にしたような形ですね。 そういったゲームを作っていこうというところからゼビウスの開発が始まったわけです。

 「上に撃つ弾と下に撃つ弾を打ち分けて敵をやっつけていく」というのは その後色々なゲームに取り入れるようになって、 こういったゲームが増えていくようになったわけです。

■ 隠れキャラについて

 今出てきたヤツは隠れキャラというヤツで、 照準が何か当たるものに反応して色々光るようになっているのですが、 何もないところで突然光ったりするわけです。

 そこを撃つとそこに隠れキャラというのが登場するわけなんですが、 「見えない敵」というのはこのゼビウスができたときにはまだ登場していなくて、 そういったものを探していくというのが結構ゼビウスの面白さみたいになった部分があって、 以降、隠れキャラというのがゲームの主流みたいな風になって、 本当は最初はゲームの調味料的なおかず的なものだったのですけれど、 そういう風に捉えている人達が以降出てくるわけですね。

■ グラフィックについて

 ゼビウスの頃のキャラクタは単色、というか原色をつかったキャラクタが非常に多かったわけですが、 もちろん色数も今みたいに何色も使えるわけではなくて、 これ(ゼビウス)は多いほうで、ひとつのキャラクタに7色使うことができます。 その7色を全部グラデーションに使って、 物を立体的に見せようという試みをやってみたわけです。

 最初に作られたのは板みたいなものですね。 ああいった板状のものというは同時にふたつの面しかこちら側に見えることがないわけで、 ふたつの面の濃淡だけでどちらが前にあるか、 そういった角度みたいなものを表現できるか、 そういったところから始めまして、 色々なものを濃淡で立体的に見せる、そういったことやったわけです。

■ サウンドについて

 サウンド的にも非常的にも面白いも部分があって、 さっきの板に跳ね返る音が僕は気に入っているのですけれど、 現実感をなくす、「現実は現実、ゲームはゲームなんだ」という感じを持たせるために非常に単調な音がついてます。

 この頃からゲームのBGMっていうのは非常に重要になってきまして、 レコードなんかも色々出てきたりしました。 今ではFM音源が主流になってきて、 こういった単調な音というのはなくなってきているのですけれど、 当時はこうしたBGMは非常に斬新だったわけです。

■ 難易度調整について

 あと面白い機能なんですけれど、 ゼビウスには非常に簡単なAIが組み込まれています。 「プレイヤーがどれくらいの腕か」というのを判断して、 出てくる敵が強くなるんです。 強いと思った相手には強い敵が出てきて、 弱いと思った相手には弱い敵が出てきます。 そういったプログラムが組み込まれています。

ゲームの難易度というのは「初心者には難しくて、上級者には簡単だ」ということが、 ひとつの難易度で(調整を)やっていくと起きてしまうので、 その辺を何とか改善したいな、ということでそういったことを始めてみたのですけれど、 お陰で割合にあまり上手くない人でも比較的長くプレイできる、 うまい人でも最後のほうに行くまで結構ドラマチックに楽しめる、 そういった感じになっています。

■ 解説

 ゼビウスが「スクランブル」に多大な影響を受けていることは追記することはありませんが、 ショットの撃ち分けに関してはゼビウス以降の縦スクロールシューティングにおいて、 「自機より上のレイヤに飛んでいく」「レイヤ移動中にも敵にヒットする」などの要素が盛り込まれて行くことになります。 例えば後者で言えば、ブラスターの発射の瞬間ならば空中の敵にもヒットしますし、 落下中でも同じ高度の敵がいればヒットする、と言った具合です。

 当時の例外を挙げれば撃ち分けをなくした「スターフォース」が必ずと言ってよいほど名前が出てきますが、 このゲームの場合は「空中大陸上に乗っている地上物」ということが着想視点であり、 撃ち分けをなくしたというよりはそもそもの着眼点が違っている可能性のほうがかなり高く、 安易な言及はここでは避けておきます。 それはスターフォースの元となるゲームと関係しそうですが、それはまた別の話となります。

 ショットの撃ち分けについて言えるのは、 「トップビュー」という表現上の性質のために微妙な高度の表現に適さないことが前提として存在し、 そのために主だった進化は起こっていないことでしょう。 これはサイドビューのゲームにおいては奥行き方向に対する問題と同一です。

 後年になって「レイフォース」などのロックオン形式のゲームなどが発売されますが、 特定の高度に存在する敵にめがけてレーザーを飛ばすことで多段階的な高度の表現に成功しています。 しかし、これはゲームで利用できるグラフィックスが発展したために可能となったものであることは熟慮すべき点です。 例えばキャラクタの拡大/縮小(パターン描画も含む)を行えること、 利用できる色数が増え、色彩によって奥行きを表現できるようになってくることが前提となります。 代表的な例で挙げると「空気遠近法」などのものを応用したものです。

 隠れキャラに関してはゼビウスほどプレイヤーを熱狂させたフィーチャーはなく、 「そこにないはずのものが現れる」というのは当時かなり画期的でした。 これをうまく消化したのが後にファミコンで発売された「スーパーマリオブラザーズ」や、 同メーカーより発売された「ドルアーガの塔」「パックランド」などでしょう。 いずれも「攻略本」という新しい形のものを生み出すほどに必要なボリュームをゲームに与えましたが、 同時に、深い意味も与えずに「隠し」というものが乱用されるようになったことで、 見せかけのゲームボリュームを作ることを許容してしまう諸刃の剣となりました。

 グラフィックについては「ゼビウス発売前夜」のほうが詳しいため割愛しますが、 「板状のものは常にふたつの側面しか見えない」という考えに基づき、 試作的なキャラクタから制作を始めている部分はゲーム製作者であれば注目すべき点でしょうか。 補足をすれば、2面しか見えないのは構図の問題で、立体は最大で3面まで見れるものですが、 あの短い番組内でそこまで説明するには時間がなかったということです。

 サウンドに関して言えばバキュラの反射音は当時のゲームではかなりエポックでした。 「ALL ABOUT NAMCO」というムック本でもバキュラの反射音について言及があり、 「弾は当たるけれども硬くて壊せないものをうまく避けるためにサウンドに頼る」という旨の攻略法が記載されています。

 スクランブルにおいても壊せないものとして隕石が出現していましたが、 プレイヤーに「邪魔だなぁ」と思わせる障害物ではありませんでした。 どちらかと言えば「危ない!」と言って回避するようなものと言えます。 ですから、ゼビウスはこのサウンドをつけることによって、 「硬さ」や「邪魔な障害物」であるということを表現するした初めての作品だたと考えられそうです。

 BGMについては単調なセンテンスの繰り返しではあるものの、 延々と聞いても飽きの来ないもの、耳障りにならないもの、という点は注目に値します。 本セミナーにおいても言及のある「現実は現実、ゲームはゲームなんだ」という点について、 ゼビウスのBGMというのは正に「今はゲームをやっているのだよ」という不思議な空間をプレイヤーに与えています。

 ゼビウスを題材にしたレコードなどは最近になってリバイバルブームがあり、 再販もされましたが、BGM、いや、VGMブームの先駆けとなったのは、 テクノポップとの融合において注目されることになったことが引き金となりました。

 最後に敵のAIに関してですが、 こちらは既に何度も語られているように、 難易度順に敵の出現テーブルを用意しておき、 敵の出現進捗によりテーブルインデックスを進めていくことで実現されています。 セミナー内では言及がありませんが、 「自機のポジションにより敵の出現位置が変化する」という点も簡素なAIを思わせる要素です。

 AIを語るに際して重要なキーワードとなるのが「ゾルバグ」という敵のレーダー基地を破壊すること、 および「自機の死亡」です。 これらのアクションがゲーム内で起きると「テーブルインデックスの引き戻し」が行れます。 特に「レーダー基地が破壊される=ソルバルウの情報が送れない」、 つまり「敵の最新情報が掴めないから迂闊に主力部隊を送り込むことができない」という設定は今でも色褪せません。

 また、単純な出現テーブルによる設定だけではなく、 出現間隔を制御していることで攻撃に緩急を作っている点、 それから、「特定の場所では特定の敵キャラクタを出現させる」という面ごとの特徴付けを行っている点が評価されるべきです。 スクランブル、いや、現代においても敵は必ず同じ配置で出現しているわけですから、 いつもと違う攻撃をプレイヤーに与えながらもうまくバランスが取る、ということを、 現代のゲームデザイナーはもっと研究しても良いと思います。

 以上で簡単な解説は終わりますが、 やはりYoutubeより、当時の熱気が伝わってくる貴重な映像を見ることができますのでここに紹介します。

 細野晴臣 − Video Game Music(XEVIOUS)